この記事でわかること
- JOOLA 陳衛星の基本スペックと素材構成
- 攻撃と守備、どちらに寄った設計なのか
- どんなプレースタイルのカットマンに合うか
- 松下浩二や朱世赫といった人気カットラケットとの違い
- 実際に使った感覚として語られる打球感や評判
カットマン用ラケット選びは、ラバー選び以上に最終的な戦型を左右します。「攻撃も守備も諦めたくない」「ブツ切れカットと攻撃ドライブを両立したい」という人にとって、JOOLAの陳衛星は気になる選択肢のひとつだと思います。この記事では、スペックの読み解きから打球感、向き不向きまで、用具選びの判断材料になる情報をまとめていきます。
JOOLA 陳衛星の基本スペック
ラケットの素性を理解するうえで、まずスペックを押さえておきます。陳衛星は、いわゆる「現代型カット」を意識して作られた5+2構成のシェークラケットです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | JOOLA(ヨーラ) |
| カテゴリ | カットマン用シェークラケット |
| 希望小売価格(税込) | 11,990円前後(市場流通価格) |
| 板構成 | リンバ – コト – ブラッククロス – 桐 – ブラッククロス – コト – リンバ(木材5枚+ブラッククロス2枚) |
| 板厚 | 5.9mm |
| ブレードサイズ | 169×162mm |
| 平均重量 | 90g±5g |
| グリップ形状 | FL(フレア)/ST(ストレート) |
| グリップサイズ | FL:100×34mm/ST:100×28mm |
| 性能の傾向 | スピード:中/回転:やや高/コントロール:高 |
価格は卓球専門店や時期によって振れ幅があり、実売では7,000円台後半〜1万円前後に落ち着くケースが多いです。発売から年数が経っているモデルなので、定期的にセール価格で出回るのも特徴です。
注目したいのは、コトと桐の間にブラッククロスを2枚挟んでいる点です。一般的な5枚合板と違い、衝撃の伝わり方を意図的にコントロールしてあり、カットマン用ラケットらしいしなりと安定感を生み出しています。
JOOLA 陳衛星の特徴・レビュー
陳衛星を一言で表すなら、「現代カットマンの折衷案」です。守備一辺倒でも、攻撃カットマンに完全に振り切ってもいない、ちょうど真ん中を狙ったような立ち位置にあります。
特徴①:攻撃と守備のバランスが取れた5+2構成
このラケットの核は、5+2のブレード構成です。芯材に桐、外側にリンバ、その内側にコト、そしてコトと桐の間に細かい繊維のブラッククロスを2枚挟む形になっています。桐はもともと軽くて柔らかい素材で、振り抜きの軽さとボールを抱える感覚を出します。コトは硬く、しなりを抑えてくれる素材です。
さらにブラッククロスを挟むことで、衝撃の角を取りつつ、しなり過ぎを防いでくれます。結果として「振ったときには軽く、当てたときには球を持つ、強く打てば弾く」という三拍子が成立しています。カット用ラケットでは「弾みすぎてカットが安定しない」「弾まなさすぎて攻撃が決まらない」のどちらかに寄りがちですが、陳衛星はその中間を狙って完成度高くまとめています。
特徴②:板厚5.9mmで生まれる絶妙な球持ち
板厚は5.9mmと、カット用ラケットとしては標準的な厚みです。極端に薄い守備系ラケットだと球持ちは長いものの攻撃時に詰まる感覚があり、逆に攻撃カット用ラケットの6mm超になると今度はカットが浮きやすくなります。陳衛星はその中間にあり、球を抱える時間が長すぎず短すぎず、コースを狙ってカットを切る作業がやりやすいです。
実際に打ってみると、フォアでループドライブを打ったときも板にグッと食い込んでから抜けていく感覚があります。これは芯材の桐と表面リンバの組み合わせがうまく機能している証拠で、攻撃の初速は控えめでも、回転をしっかり乗せた一発が打ちやすい設計です。
特徴③:169×162mmの広いブレードでスイートスポットが大きい
ブレードサイズは169×162mmと、カットマン用としては標準よりわずかに大きい部類です。後陣に下がってカットを返球する場面では、ボールに対するスイングのブレが大きくなりやすく、ラケットの中心で当てきれないことも珍しくありません。ブレードが広いほどミスショットが減り、安定して切ったカットを送り返せます。
合わせて90g±5gという平均重量も、振り抜きやすさと安定感のバランスを意識した数字です。軽すぎると後陣からのパワーカットで押し負けますし、重すぎると連続カットで疲れます。90g前後はカット主戦型にとって取り回しやすい重量で、ロングラリーでも体への負担が大きくなりすぎません。
特徴④:ドイツテンション系ラバーとの相性が良い
陳衛星は全体としては「やや弾む」傾向のあるカット用ラケットです。そのため、ドイツ系のテンションラバーと組み合わせたときに性能が引き出されやすいと言われます。実際、エクステンドやヴェガ、グリップS、ラクザシリーズあたりとの相性報告が目立ちます。フォアにこの手の中硬度テンションを貼ると、攻撃時のスピードと、カット時の引っ掛かりが両立します。
逆に粘着系の重いラバーを貼ると、せっかくの軽快さが消えてしまうことがあります。重さが90g前後でちょうど良く設計されているので、フォアラバーは50g前後、バックは粒高ラバーで45g前後を目安にすると、トータル180g以下に収まり、振り抜きが軽快なまま使えます。
特徴⑤:陳衛星本人の意向が反映された現代カットの設計思想
このラケットは、元中国代表で後にオーストリアへ帰化した陳衛星選手本人が開発に携わったモデルです。陳選手のプレースタイルは、フォアの強烈なドライブとバックの粒高による変化カットを軸にした、いわゆる「攻撃的カットマン」の代表格です。
そのため陳衛星ラケットも、後陣で守るだけの設計ではなく、自分から仕掛けに行ける性能を意識して仕上げられています。ラケットを通じて表現されているのは「カットマンも攻めなければ勝てない」という思想で、攻撃と守備の境目を曖昧にしてくれる作りです。守りに専念するのではなく、カットでミスを誘って自分のドライブで決めたい人には、設計思想そのものが合っていると言えます。
JOOLA 陳衛星のデメリット・注意点
良い面ばかりではなく、合わない人がいるのも事実です。買ってから「思っていたのと違う」とならないために、率直なデメリットも整理しておきます。
- 完全な守備重視ではない:弾みは抑えてあるとはいえ、純粋なディフェンシブ系ラケット(松下浩二ディフェンシブ、朱世赫ディフェンスなど)と比べれば弾みます。後陣で粘ることに全力を注ぎたい人には、もう一段柔らかい守備寄りラケットの方が合うことが多い
- 陳衛星選手の真似をしたい人には推奨されにくい:意外に思うかもしれませんが、陳選手のような「攻撃の威力で押し切るカット」を再現したい場合、松下浩二オフェンシブや朱世赫の方がパワー寄りで合うという声がある。陳衛星ラケット自体はバランス型で、攻撃の最大値はそこまで突き抜けない
- 遠くに飛ばしにくい:使用者の感想として「強打しても距離が出にくい」「相手コートの深いところに突き刺すボールは出しにくい」という意見がよく挙がる。代わりに、深さよりも回転で勝負するスタイルになりやすい
- 発売から年数が経っており、新型カット用ラケットと比べると素材的に古さは否めない:近年の特殊素材入りカット用ラケットと比較すると、攻撃時の初速や反発の鋭さでは見劣りする
- 市場在庫が安定しない:人気モデルではあるものの常時潤沢に流通しているわけではなく、グリップ形状や時期によっては取り寄せ対応になることもある
こんな選手におすすめ
- ✅ 攻撃と守備の両立を目指す中級〜上級カットマン:弾みすぎず、抑えすぎないバランスがフィットする
- ✅ ドイツ系テンションラバーをフォアに貼って使いたい人:相性の良さがそのまま安定感に直結する
- ✅ 後陣からのカットだけでなく、台についてのドライブも積極的に使いたい人:振り抜きが軽く、攻撃の切り替えが速い
- ✅ 90g前後の軽量カットラケットを探している人:腕への負担を抑えながら、しっかり板の重みも感じたい場合に向く
- ✅ ブツ切れカットで相手を崩し、隙を見て一発で仕留めたい変化型カットマン:球持ちと回転のかけやすさが、変化の幅を広げる
こんな選手には向いていない
- ❌ ひたすら拾い続ける守備一辺倒のカットマン:純粋な守備力を重視するなら、松下浩二ディフェンシブや朱世赫ディフェンス系の方が安定する
- ❌ 陳衛星選手と同じ「攻撃寄り」の派手なドライブを再現したい人:イメージ通りの威力を求めるなら、松下浩二オフェンシブの方が一致しやすい
- ❌ 後陣から強引に押し込むパワーカットを理想とする人:ラケットの絶対パワー量はそこまで大きくないため、自分の体格や腕力に頼った打ち方には向かない
- ❌ 初めてカットマンを始める初心者:性能はバランス型だが、5+2構成の感覚は独特で、安価な木材5枚合板の方が基礎技術を覚えやすい
JOOLA 陳衛星を使ってみての印象・評判
実際に陳衛星を握ってみると、第一印象は「思ったより素直」です。カット用ラケット特有の「ボールがべったり板に張り付く」ような重さは少なく、むしろシュッと軽く振れます。ところが、ボールを当てた瞬間にはしなりと球持ちがしっかりあり、球を運ぶ感覚が出ます。この素直さと粘りの同居が、陳衛星の打球感の核心です。
カットを入れると、相手の強打に対してもラケットが負けにくく、止めた瞬間にスッと押し戻すような反発があります。これがブラッククロス2枚の効果で、コアの桐がたわみ過ぎず、結果としてカットの軌道が低く安定します。連続カットを送り続けても球が浮きにくく、ロングラリーで主導権を握りやすい印象です。
ループドライブを打つと、板にしっかり球が食い込んでから飛んでいく感覚があります。スピードは控えめでも、回転がきれいに乗るので、相手から見ると重い球質に感じられます。スマッシュも、当て方を覚えれば十分に使える反発があり、攻撃のフィニッシュとしての一発が打てる点は心強いです。
一方、よく挙がるのが「強打しても距離が伸びない」「もっと飛ぶラケットだと思っていた」という声です。これはラケットの設計思想が「強打で押し切る」ではなく「コントロールと回転で崩す」方向にあるためで、求めているスタイル次第では物足りなさにつながります。後陣から相手コート深く突き刺すような攻撃を主軸にしたいなら、別のカット用ラケットを検討した方が良い場面もあります。
松下浩二オフェンシブ・朱世赫との比較
カットマン用ラケットを検討するうえで、比較対象として外せないのが松下浩二シリーズと朱世赫です。それぞれの違いを整理します。
| 比較項目 | JOOLA 陳衛星 | VICTAS 松下浩二オフェンシブ | andro 朱世赫 |
|---|---|---|---|
| 価格帯 | 1万円前後 | 1万円台中盤 | 1万円台中盤〜後半 |
| 板構成 | 木材5枚+ブラッククロス2枚(5+2) | 木材5枚(マホガニ表板) | 木材5枚(やや厚め) |
| 板厚 | 5.9mm | 5.8mm前後 | 6.2mm前後 |
| 弾み | 中 | 中〜やや強 | やや強 |
| 攻守バランス | バランス型 | 攻撃寄り | 攻撃寄り |
| こんな人向け | 攻守を均等に伸ばしたい中上級者 | 守備の安定の上に攻撃を乗せたい人 | カットも攻撃もパワーで押したい人 |
陳衛星は3本の中ではもっとも「素直で扱いやすい」立ち位置です。松下浩二オフェンシブは表板にマホガニを採用しており、攻撃時の弾みが分かりやすく出ます。朱世赫は板が厚めで、後陣から押し込むパワーカットや強打に向きます。
選ぶ基準としては、「自分の戦型がまだ完全に固まっていない/攻撃も守備も同じくらい使いたい」なら陳衛星、「松下浩二スタイルの安定したカットを基盤に攻撃を加えたい」なら松下浩二オフェンシブ、「フィジカルに自信があり、後陣からパワーで押したい」なら朱世赫、というイメージで選ぶと外しにくいです。
陳衛星は3本のなかで、もっとも初めてのカットマン用ラケットとして導入しやすい1本だと思います。極端な性能ではないため、自分のスタイルが固まっていく過程で長く付き合いやすいラケットです。
おすすめのラバー組み合わせ
陳衛星をフルに活かすには、ラバー選びがポイントになります。よく合わせられている組み合わせは次のとおりです。
- フォア:ドイツ系テンションラバー(中硬度、47.5度前後)。エクステンド、ヴェガアジア、グリップSあたりが鉄板。攻撃のスピードを底上げしつつ、カットの食い込みも保てる
- バック:粒高ラバー(OXまたは0.5mm〜1.2mm)。ファントム、フェイント、グラスDテックスなどの定番が好相性。カットの変化幅が広がり、ブロックでの揺さぶりも効きやすくなる
特にフォアにJOOLA同士でラクザやリゾルートを合わせる例もありますが、陳衛星本人がフォアにキョウヒョウ系の粘着を貼って使ってきた背景もあり、近年は粘着+ブースターで重さを抑えた組み合わせも見かけます。ただし、ラケット自体が遠くに飛ばすタイプではないので、重い粘着を貼るとさらに飛ばなくなる点には注意が必要です。
バック粒高はラケットの軽さを活かすために、できるだけ薄め(0.5〜1.0mm)を選ぶと、振り抜きとブロックの感触が両立します。OXまで攻めると変化は最大化しますが、相手のスピードボールに対するブロックが難しくなるため、自分の技術レベルと相談して選ぶのが無難です。
価格・購入先
陳衛星は希望小売価格1万円台前半のラケットですが、卓球専門店ではセール対象になりやすく、実売は8,000円前後〜1万円程度のレンジが中心です。新品で1万円を下回ることが多く、コスパは良好な部類に入ります。
| 購入先 | 特徴 |
|---|---|
| Amazon | 在庫があれば即日発送が期待できる。タイミング次第で実売最安に近づく |
| 楽天市場 | 卓球専門店の出店が多く、ポイント還元込みで実質最安になることもある |
| 卓球専門店(実店舗・通販) | グリップ太さの確認や、シェークの握り具合を試せる店舗もある。長く使うなら検討の価値あり |
中古市場ではあまり出回らない部類で、見かけたら状態次第で検討する価値があります。ただし長年カット用に使われたラケットは、表板にラバーを剥がした際の傷みや反発低下が出ていることが多いため、状態確認は必須です。
まとめ:JOOLA 陳衛星はこんな人に買ってほしい
JOOLA 陳衛星は、現代カットマンの「攻撃も守備もこなしたい」という欲張りな要求に、ちゃんと応えてくれるラケットです。極端に弾むわけでも、極端に止まるわけでもなく、5+2構成の独特な打球感とブレードの広さが、ちょうど良い均衡を作っています。
カットの安定性を確保しながら、機を見て一発で仕掛けるスタイルを目指すなら、買って後悔しにくい1本だと思います。逆に、後陣で粘り続ける守備型を目指すなら松下浩二ディフェンシブ系、攻撃を主体にしたいなら松下浩二オフェンシブや朱世赫の方が向いている場面もあります。
カットマン用ラケットは、種類が少ないからこそ1本選ぶと長く使うことになります。陳衛星は癖が少なく、ラバー選びの自由度も高いので、これからカット主戦型として用具を固めていきたい人にとって有力な候補になります。迷っているなら、フォアにドイツ系テンション、バックに粒高薄めという王道の組み合わせから入って、自分の戦型に合わせて少しずつ調整していくのが良いと思います。
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